先日、IKEAが主催する子育てイベント「子供部屋についてみんなで考えよう」というパネルディスカッションに出席してきました。
IKEAの企業理念は「家が世界で一番大切な場所」、「子どもは世界で一番大切な存在」ということらしく・・・
子供中心の住まい造りを考えていて、小学生の子供部屋について様々な意見を取り入れたいという趣旨で開催されました。
今回のパネルディスカッションの司会者は久保純子さん。
柔らかい口調で子供の住環境を考えたディスカッションがスタートしました。
パネリストは、医学博士で学習カウンセリング協会理事長でもある「吉田たかしさん」とイケアの社内保育施設の園長さん「渡邉クリスティーナ」さん、東京電機大学教授である「勝又洋子」さん、特定非営利活動法人せたがや子育てネット代表の「松田妙子」さんの計4名
それぞれの子育てに関する話と、事前に我々が挙げた質問に対し各パネリストが答えていくという進行でした。
中でも「吉田たかよし」さんのお話はきちんとした裏付の元に繰り広げられてとても興味深い物でした。
それは、世界最小の心電図を取り付けた被験者がどのような環境でストレスを感じたかというのを調査したデータで、例えば5歳時のTV試聴時間によって中学3年時の集中力持続時間に差が出てくるというもの。
小さい頃にTVを3時間以上見ていた子供は充分な集中力を発揮できないという事らしいのです。
それによると、
TVというのは一方的な情報のみで集中力育成に悪影響を与えるという事らしいのです。
それは人の表情を汲み取ったり、視線を合わす事によって集中力を高めるトレーニングを行っているということ。
その機会を失ってしまうことがこういう調査結果に現れているのだと思います。
そして、学習環境においても個室に閉じこもって学習する事はこのチャンスを失ってしまう事になるらしいのです。
勉強をしている子供と少しでも顔を合わせる事によって、勉強して暫く立った子供の集中力を回復させる効果があるというのです。
こういう実験結果からも勉強部屋=個室というスタイルから離れ、リビングに面する学習コーナーやダイニング脇で勉強できる仕組みを考えることが重要だという事が解ります。
また、TVに関してはニュージーランドの実験結果だとTVを見なければいいということではなく、小時間見させたほうが成績が高まるという結果があるそうです。
さらに、吉田氏はビデオ教材についても「あまり効果がない」と言及していました。
それも、一方的な情報はあまり効果がないということなんでしょうね。
特定非営利活動法人せたがや子育てネット代表の松田妙子さんの話も違った視点で楽しかったです。
それは
子供の学習といったテーマではなく、子供が自然とお手伝いをする住環境といったテーマで自分の実体験を交えて解説して戴きました。
物干し場の前にある子供の学習スペース→洗濯物を干すのを手伝う。
子供部屋から外に出れて土に触れる環境。
トイレは子供が自由に飾り付け→お掃除も子供。お風呂場の掃除も子供。
といった住まい方を紹介して戴きました。
これらは、考えて設えたりした事ではないけれど、結果的に自発的にお手伝いや興味を引き出す事に成功している事例だと感じました。
---
その他、クリスティーナさんはスウェーデンの子供部屋事情等を話して戴きました。
スウェーデンの子供部屋は決して広くなく、個室よりリビングなどにそれぞれのスペースがあるかが重要とのこと。
子供が赤ちゃんの時の写真を飾ると、子は自然と自分が愛されている事を知り、おばあちゃんの写真は自分が遠くで見守られているんだという事を覚えるという話も興味深かったです。
また、子供部屋のインテリアは親の押し付けではなく、子供に選ばせ飾らせる事。
そうすることで愛着が湧き、自分でお掃除したりする気持ちが生まれるという話も良かったかな?
勝又先生はヒルハウスという建物を紹介いただき、一緒に住んで物語を作っていく事。意識を共有する場が重要だという事をお話戴きました。
質疑に対しての回答で興味深かったのが、色について。
ある特定の色が子供の教育・発育環境に良いということはなく、色々な色彩感覚を養う事の出来る家がいいという話。
これは、ゲーテの色彩論でも取り上げられているという事でしたが、
色にはプラスの効果とマイナスの効果があるので、特定の色だけだと、マイナスの効果も大きく受けてしまうという話。
例えば、赤い色は活動的になる一方で感情の揺れが激しくなるらしいのです。
サッカーの試合などで赤いユニフォームのチームが勝利する確率が統計的に高いらしいのですが・・・
それは、「赤い色がチームを奮起させて勝利する」のではなく、相手チームが動揺して勝利に繋がる効果があるというのです。
赤い色は血の色を連想させ、闘争心を失うという事らしいのです。
また、病院(手術室)などで取り入れられている色彩は、青と緑の中間色が多いそうです。
コレは、集中力が高まり手術の成功率が高まるからだそうです。
いずれにせよ、色それぞれ様々な効果が隠れていて、重要である事は確かなんですが、いろいろな色に接するという事がそれ以上に重要だという事でした。
---
そんな今回のパネルディスカッション。
明確な子供部屋の像は全く見えてきませんでしたが・・・
やはり、私が思うのに、
「こういう議論の場に親が参加することが一番大事」
だということ。
4人のパネラーそれぞれ違った考えがあるように、また吉田さんと松田さんのように「学習」をテーマに考えるか「お手伝い・触れ合い」といったテーマで家造りを考えるかで全く違った家になると思うんですよね。
ですから、まずは両親が子供の将来を考え、どの様な子供に育ってもらいかを真剣に議論する事。
そして、その子供の見本となるように大人が振舞う事。
家造りにおいて、ただ単に「頭のよくなる家」を造るではなくその過程こそが重要だと思っています。
勉強が出来る子供に育ってもらいたいか?
どんな事に興味を持ってもらいたいか?
逆に、学校の成績や受験以上に人と触れ合う事を重視して和やかな家庭を築ける能力を身につけてもらいたいのか?
親がよ〜く考えること。
親の夢や希望の押し付けでなく、何が出来るか?
実は家造りにはそういった大きな力があると思っています。
---
そうそう、もう一つ吉田たかよしさんが言ってた言葉で、「
白目があるのは人間だけ。動物は視線をよまれると獲物を逃したり逆に狙われてしまうから。何故、人間には白目があるのか?それは、人は他人に視線を伝えたいから。」
※正確には覚えていないのでニュアンスです。
つまり、人間には感情があってその気持ちを伝える手段として白目があるというという事。
つまりはその視線が通うという事が人間の情緒や成長に大きく作用するという事です。
視線の交わすことの出来る住まい。
そして、
子供と目を向き合って語れる環境と親の姿勢が重要だという事が改めて気づかされたのでした。